傘生地ができるまで
2015年6月25日、山梨県南都留郡西桂町にある、槙田商店さんを訪問してきました。
CASA PROJECTを始めて9年、ずっとずっと気になっていた、日本での傘生地づくり。
念願叶って、見学させていただくことができました…!!!
…と、その前に、予備知識を少し。
甲斐の国(山梨県)の東側は郡内地方と呼ばれ、400年前から続く絹織物の産地です。
富士山からの豊かで奇麗な水は、染色に使うと発色が良く、この地域ならではの織物が発達。
明治・大正期に全盛期を迎え、この地方で織られた布は甲斐絹(かいき)と呼ばれました。
江戸時代には羽織の裏地に使われていましたが、その後薄い生地を均一に織る技術を活かして
洋服の裏地やストール、ネクタイ、そして洋傘地の製造を行なうようになったとのこと。
以前に比べると織物業に関わる人は少なくなったものの、
現在も郡内織(総称は甲州織)として、富士吉田市、西桂町(にしかつら)、都留市(つる)の地域の産業となっているそうです。
さて、今回見学させていただいた槙田商店さんは、江戸時代末期から甲斐絹の製造を行なっている、創業140年の機屋(はたや)さん。
富士急行線の三つ峠駅から、歩いてすぐのところにあります。
もともとは服の裏地の製造が主だったそうですが、ナイロンやポリエステルが使われるようになった昭和30年頃に傘生地の製造を開始。
現在は傘生地と服地の製造卸、また50年ほど前から傘の組み立ても行なっているそうです。
槙田商店さんならではの生地の特徴は、リピート柄でない、大きな柄を織り描くことができること。
それも糸を先に染めているので、深くて光沢のある、高級な生地が生まれます。
ここで、染色についても教えていただきました。
ご案内いただいたのは、槙田商店さんから少し離れたところにある、向原染色さん。
糸を綛(かせ)の状態で均一に染める方法(綛染め)で、お客さんからの注文の色に染め上げます。
工場の中には機械がたくさん。3kgの糸を染められる小型のものから、50kgまで染められる大型のものもあります。
傘の生地に使うポリエステルの糸は染まりにくいため、130度のお湯で染料を押し込むように染めるそう。
富士の豊かな水がジャブジャブとたくさん使われていました。
染め上がった糸は整経屋さんに納品され、1万2000本×550mの経糸(たていと)のロールとなって槙田商店さんに届きます。
(550mの糸は織り上げていくうちに500mになるそうです。それだけぎゅっと緻密に織られるということですね。)
糸が整然と並んでいる様子は、とても奇麗…すでに光沢があります。
そして緯糸(よこいと)も揃ったら、ついに生地の織りがスタート。
槙田商店さんには、下の写真のような電子ジャガード機が6台もあって、ものすごいスピードで生地ができていきます。
写真は縦一色・横一色ですが、経2色・緯3色など、色のバリエーションは無限大。
1台の織り機で、120cm幅程度の傘生地を一日に70mほど(=傘70本分)織れるそう。
出来上がった生地を触ると…CASA PROJECTで集まってくる傘たちにはない、高級感…!!!笑
こんな素敵な生地を使った傘なら、絶対大事に使いますよね。
絹のような光沢、プリントではとても表現できない、深い織りの世界に少しだけ触れられた気がしました。
最後になりましたが、お忙しいなかご案内いただいた槙田商店さん、向原染色さん、
本当にありがとうございました。
CASA PROJECTをしていくなかで、少しでも多くの人に日本の傘づくりのことを伝えていけたらと思います。
No.000 HOUKO
取材協力:Aya Nishiwaki
※槙田商店さんではオリジナルの傘の製造販売もされています。
中国産ではない、日本で丁寧につくられた本物の傘をぜひ手に取って見てみてください。
野菜をモチーフにしたかわいいオリジナル傘もつくられています!